障子紙

眩暈

眩暈

すると彼は眩暈でもするのか、もう一度頭を強く振る。どうやら先程首を振ったのも、否定の意思表示ではないらしい。

「まあ、君が見た通りだ。……一々気絶していてはサークルが成り立たんし、君としてもあんな顔はもう見たくないだろう」

「……そんな言い草って」

「彼が恐怖のあまり気絶したのは、紛れも無い事実。……それともロザリア君は彼を強制的に入会させろとでも言うつもりかね?」

 ジェスの反論に、ロザリアは口を噤むだけ。

「……僕としても残念だが、やはりこのサークルは潰れる運命らしいな」

「……潰れる?」

訝しげな質問に、ジェスの眼が、獲物を捕らえた肉食動物のように光った。

「君は知らないかもしれないが……僕達のサークルは大学非公認のものだ。この大学の会則では、サークルは五人以上いなければ公認されないのだよ……まあ、活動年を問わないという意味では、他の大学よりもずいぶん緩い会則なのだが」

 ジェスは言葉を切ると彼に背を向け、部室の窓をカラカラと力無く開けた。手を腰の後ろに組み、曇りきった空を見やる。

「去年は二人の先輩がいたので、ギリギリで五人揃った。が、今年はその二人が卒業したのでサークルメンバーは三人になり……サオリで勧誘を続けたが、そこにいるロザリア君しか入会してくれなくてね……まあ無理も無い。今年の新入生で遺伝子操作兵はロザリア君しかいないのだから」

 つまり、このサークルは現在四人しかおらず、非公認の状態なのだよ、とジェスは付け加えた。

「あの……非公認だと、何かマズイんですか?」

「まず、部室が与えられない。部室が与えられないと、集合場所に大変困る。……普通のサークルならば学食に集まっても問題ないんだが、僕達が学食にいると、半径三メートルは空席になってしまうから、学食の運営委員からも『来ないでくれ』という内容をオブラートに包んで言い渡されている始末だ。

 次いで、会費がない。ボランティア活動と言っても、金がかからないわけでは無い。交通費はいるし、清掃用具を買う資金もいる。非公認になると、この資金の調達が大変難しい……なにしろ、僕等をバイトで雇ってくれる雇用者は、実に少ないのでね」

 かく言うジェスも、学費は出身国からおりた戦災補償金と、育英会の無利子無担保、返済義務無しの奨学金から捻出している。

「そういう訳で、今、我々は非常にデリケートな立場に立たされているのだ」

 背を向けるジェスと、その背を心配そうに見つめるロザリア。そして、二人を見比べる青年。