彼
「さて……彼が目覚めた時、どんな対応をしたらいいものかな」
「対応って……そもそもあたし達の話を聞いてくれますかね?」
「まず、ないだろうね」
「その、まず、って一体なんです? 気休めならいいいですよ」
自棄気味に言うロザリアに対し、ジェスは未だに眼を閉じたまま思案に耽っている。
「諦めない限り可能性はある。……フランクのあの顔にショックを受け、部分的な記憶喪失になっていないとも限らない。フランクの顔さえ忘れていれば、入ろうかな、とは思うかもしれない」
……一%よりも、少ない確率だ。
「……もっと、こう、現実的な対応を期待する事は出来ないんでしょうかぁ?」
「君の力で薬漬けにし、僕達の意のままにする。あるいはマナの力で、フランクについてのみ、彼の記憶を操作するのがもっとも確実で現実的な考え方かな」
チラリと横目でロザリアを見やると、彼女は半眼でジェスを睨んでいた。
「そんな事を言うから、未だに遺伝子操作兵への偏見が消えないんですよぉ!」
「僕は、もっとも確実で現実的な方法を提案しただけで、やれとは一言も言っていないよ。第一、そんな事が発覚したらサークルを取り潰す絶好の口実を与えてしまう。いや、取り潰すどころか僕等全員退学というのも有り得そうだな」
サークルが取り潰されるからやらないのだろうか、と疑問を抱くロザリアを気にも留めずジェスは考え続ける。
「まあ、どちらも僕の本意ではない。無駄だろうが、次善の策を用意しよう」
「……あるんですか、そんなものが?」
「少なくとも、記憶喪失になっているのを期待するよりはマシな策だ。が、あまり期待しないでくれ。世の中、そう都合良くはいかないものだからね」
「……ウゥゥ……」
椅子に座らせておいた彼が、眩しそうにその瞼を開いた。
「気がついたかね? 何があったのか、覚えているかね?」
ジェスの声に、彼は椅子から身体を起こし、首を軽く振る。
「君は気絶したのだよ。何故気絶したのかは、覚えているかね?」
「はい……大丈夫です……ちゃんと、覚えてます」