サークル
「あ〜、これか! あたしもこれで、ここのサークル知ったしぃ」
彼の手から切り抜きを奪い取ると、ロザリアは記事を舐めるように見つめる。
『今回、犯人を捕らえたのは大志田大学のサークル『十人十色サークル』のメンバー。彼等は遺伝子操作兵を中心としたサークルで、自身らへの社会の偏見を取り除く為に結成された』。
「この時は大物のヤクザが事件に関わっているとはつゆほども思わなかったのだが……非常に怪しいという事で、少々ヒマだった僕等が彼等のあとをつけてみると、まあそこは麻薬取引の現場だったわけだ。幸い僕等は遺伝子強化兵だったし、その時は先輩もいたからね、一網打尽にして警察に突き出した訳だよ」
ジェスは一年前を振り返るように頷く。
「ただ、その記事にも書いてると思うが、僕達の主な活動は公園のゴミ拾いや駅前やトイレの清掃だったりする。いわゆる、ボランティア活動というやつだ」
そこで、ジェスは一言区切る。
「君は、ボランティア活動に興味があるのかな?」
「あ、はい、そうです」
彼が答えた時、ガチャリとドアノブが音をたてた。
「え? まさか……ひょっとして新入部員?!」
「何、それは本当か!」
ハスキーな美声と、部屋のガラスがビリビリと震えるほど馬鹿でかい声に、彼は反射的に、正面にいたジェスとロザリアから視線を背後に移した。
「君っ! 後ろを見るのは」
「だ、ダメ! 後ろ見ちゃダメェェ!」
ジェスとロザリアが慌てて警告を発したが、遅かった。彼は後ろを見てしまった。
一人は、色白の少女。目は血のように赤いが、優しそうな視線が柔らかい印象を与えている。鋭い犬歯は牙といっても良いが、凶悪なものには見えない。顔の彫りは深く、バランスも整っており、肩口まで伸ばした黒のショートカットがよく似合っている。
彼女の隣りにいたのが、問題の根源だった。
全身を覆っているのは灰色の分厚い皮膚。頭部は、人間のものとはかけ離れており、映画や漫画にでも出てくるリザードマンのようだ。額にある長い角が存在を声高に主張している。身長は二メートルを越えているのが確実で、腕の太さなど女性の腰周りよりも太い。何より、口元に収まりきれない巨大な、牙と言うには憚られる凶器が、蛍光灯の反射を受けてギラギラと光っている。
「オレの名前はフランクリン・ヴァーリ。フランクと呼んでくれ。サイがベースだ」