露座
ロザリアは小刻みに揺り動かす手を、ドアの向こうにいる彼に向け、
「か〜っ!」……怨念じみたものを送っているようだ。
「ロザリア君、彼が君の怪電波を発する様子を見たら、彼は絶対、このサークルには来ないぞ……それにしても……十人十色サークル。人が集まらないのはこのネーミングにも原因があると思うのだが、ロザリア君、君はどう」
思う、と言いかけた時、ドアの向こうの彼が眼を閉じ、深呼吸。意を決し、扉のドアノブを回す。キィィ、と貧相な音をたて開かれた扉から、気弱そうな顔だけが部屋にひょっこりと出された。女性のような撫で肩で、顔立ちと相まってボーイッシュな女の子に見えないこともないが、特徴らしい特徴のない、どこにでもいそうな青年だ。日本人独特の気弱な『とりあえず笑っておこう』スマイルも、平凡な空気を作るのに一役買っている。
「あの……こちらは、十人十色サークル、でしょうか?」
ロザリアを見て、それからジェスを見た彼は、ヒッ、と短い悲鳴をあげた。
ロザリアは戦闘態勢でなければ、外見は人となんら変わりない。その長い金髪はポニーテールにしてまとめている。瞳の色だけが少々変わっており、エメラルドのような深い緑色をしている。
ジェスも顔だけなら常人と同じだ。目付きの悪さを除けば結構イケテルように見えない事もない。ただし、昆虫がベースとなっている身体はカニのような硬い殻に覆われている。そしてそれは体の部位の中で唯一晒されている手と首も同じ。シャツを脱げば、トンボのような羽が背中にはある。数十秒なら飛行も可能だ。
「ふむ。やはり僕のこの身体は、人様にとって大変気味が悪いようだ。この日本の伝統的な特撮番組『仮面バイダー』のようでカッコイイと言ってくれる人がいないのは実に、実に残念だ」
腕組みをし、もう一度「……実に、残念だ」と無念そうに繰り返す。
「あ、いえ……その、ちょっと、ビックリしただけです。すいません」
言い訳じみた弁解をモゴモゴとする彼に、ロザリアはその周りをウロチョロ歩き回り、観察。
「うーんと、その〜、人間ですよねぇ?」
「え? あ、はい。僕は、えと、その、正真正銘、人間ですけど」
「どうしてこのサークルに来ようと思ったの?」
尋ねると、彼は鞄から新聞の切り抜きを取り出して見せた。『お手柄、遺伝子操作兵の大学生!』とデカデカと書かれた文字の下には、部員と思しき者が警察署長から感謝状を渡されている写真。