障子紙

イズ

イズ

 陽射しが弱まり、夜になるにつれて気分が落ち込んでいくのがわかる。

 サークルの存続が難しい状況だというのと、名前も知らない彼に唐突に告白され申し出を断ったのが、心にしこりを残している。

 しかたないのだ、と何度も心の中で繰り返しながらに駅に向かうマナ。その眼が大きく見開かれた。駅付近である人物を見つけてしまったからだ。

 あの彼である。白地の封筒片手に気弱そうな眼をキョロキョロと動かしている。

咄嗟にマナは物影に身を隠す。自分の服装が、いついかなる時でも目立つ事くらいは自覚している。

(うわっ、参ったな……電車に乗らないと帰れないし)

 しつこい印象は受けなかったのだが……。

 どうしようと思案していると、彼が動き出した。自分が隠れている方角に向かってくるので、マナは彼に何をどう言えばいいのかと半ばパニックに陥りそうになりながら考えていると……。

 彼は途中で足を止め、ある人物に話し掛けている。相手は、ジェスだ。

 電車が到着した。耳障りな音をたててブレーキがかかる。大きな騒音に、隣りの部屋の会話をも聞き取れる聴覚を持つマナにも二人の話し声は聞こえなかった。

 彼は、白地の封筒を渡ず。それを受け取ったジェスは中の手紙を取り出し……大いに驚いているようだ。

 何か、おかしい。あれが自分への手紙ならば、ジェスに渡す訳がない。しかし、現実に手紙はジェスに渡された。電車が動き出すのと同時に、マナも彼等に走り寄る。

「お、マナ君か。奇遇だが、良い所に来た。これで万事問題は解決だ」

 そう言ってジェスが掲げて見せたのは、先程彼が手渡した手紙。そこに書いてあるのは、

「……『入会届?』」

「ああ。どうも、僕の同情を引く話が功を奏したようだ」

 自分で言いながら、ジェスもやはり気が引けるのだろう、確認するように彼を見やる。

「本当に、いいのかい? ボランティア活動なら他のサークルでも出来る。何より、僕達と共に行動する事の方が、メリットよりも、大いにデメリットとなるだろう……それでも、いいのかい?」

 彼は眼を伏せる。口を何度か開いては閉じ、開いては閉じと、自分の心情を説明する適切な言葉を探しているようだ。