障子紙

強風

強風

 春特有の強風によって緑が擦れ合う。それほど強くない陽射しは葉に遮られているので、それほど問題ではない。

 サークル室へ行くにしても、周りの部屋には様々なサークル室がある。可能な限り人目を避けたかったマナは、彼を大学の敷地内にある森林公園に連れて来ていた。

「ええと……話って、何かな?」

 律儀に勧誘を断りに来たのだろうか?

 この二人っきりの空気が、そう考えさせるのかもしれない。

 告白、だなんて……。

(でも……後者は絶対になさそうだな)

 昨日会ったばかりだし、何より自分は遺伝子操作兵だ。自分で言うのもなんだが、顔立ちは整っている。が、種族の壁は大きい。しかも、よりにもよって吸血鬼。イメージ的には血を吸う巨大な蚊のイカレタ化物。……それでも、この顔がそうさせるのか、何人かは付き合ってくれ、という人もいたが。

 すると、彼は無言でポケットから白地の封筒を一つ取り出した。

(……もしかして、後者?)

 なら、どうしよう? いや、考えるまでも無い。これまでと同じように丁重にお断りするだけだ。意を決したマナは眼を閉じ、息をつく。

 白地の封筒の中身を見る前に、それを彼に返した。

「その、ごめんなさい」

「は? え、えっと、あの……ごめんなさい、とは?」

 封筒を突き返された彼は困惑したように、封筒とマナを見比べる。

「君の希望には、添えない」

 眼を逸らすようにマナは踵を返す。

「え、あの、そ、それは?」

 どういう意味、と続けたいのだろう。かなりショックを受けている様子だ。

「……ごめんなさい」

 それだけ呟くと、マナは走り出した。

「え? あ、せ、せめて理由だけでも」

 後ろは振り向かずに、息がきれるほどただ走った。