ジェス
「いや、なに、君が悪い訳ではない。君は偶然この部を見学に来ただけなのであって、君が入会しない事が悪い訳ではない。仮に君が入会せずにこのサークルが潰れたとしても、君は、まったく、悪くない」
「え? あ、いや、その」
……ロザリアからは、ジェスが今どんな顔をしているのかは見えない。しかし、心情の推測は出来る。ジェスは、人間の彼に同情して貰う事でサークルに引き込もうとしているのだ。
「まあ、これも運命だったのかな。しかしこれから僕達は一体どうすればいいのだろうか。せっかく出会った仲間達と心ならずも引き裂かれた僕達は、この先平穏無事な楽しい大学生活を送る事が出来るのだろうか……」
「……その、あの、えっと」
「僕はともかく、せっかくこのサークルに入部する為だけに入学したロザリア君が可哀想でならないし、何より居場所を作る為だけにサークル活動に腐心したマナが哀れでならない」
「……え、えー」
やたらと『為だけに』を強調するジェス。マナはどうか知らないが、ロザリアが大学に入学したのは、ひとえに就職出来なかったからだ。今時、遺伝子操作兵を採用してくれる職は政府が雇用する公務員?種くらいしかない。
「……あのー……」
「なにより、自分の顔のせいで入会してくれないと知ったら、フランクはどうするだろうか」
……ジェスは、絶対、この青年が申し訳なさそうに、何度も声をかけ続けていることに気付いている。だが際限なく喋り続ける事で退室するタイミングをことごとく絶っていた。
それでも彼は残る勇気を振り絞ったか、
「……すいません、失礼します……!」
二人の顔も見ずにそれだけ告げると、全力で走り去っていく。
予想通りの反応にジェスは、
「……まあ、誉められるような策ではないが、やれるだけの事はやった。その結果がこれなのだから、仕方ないだろう」
自らを落ち着かせるよう、天を仰ぐ。
同情を引いてまでこのサークルを守ろうとしたジェスに、どう呼びかければいいのかわからなかったロザリアは、足元に視線を落とす。
夕焼けが、部室に濃い影を生み出していた。