障子紙

バブ〜

バブ〜

静寂に響くのは木々のざわめき。硝煙の香りが風に乗り、電灯一つない山間の夜に広がっていく。欠けた月明かりに照らされていたのは、少女。背後から受けた銃弾によってシャツはすでに真っ赤。無残にも右腕は千切れかかっており、傷口から白い骨がはっきりと見える。左目に打ち込まれた銃弾のせいで、左側面の頬骨はどうなっているか……少女自身は考えたくないだろう。

常人ならば間違い無く致命傷である傷を負いながら、それでも彼女は立っていた。口が酸素を求めてだらしなく開き、涎を垂らしながら荒い吐息をついてはいるものの、細く、小刻みに痙攣している両の足で立っている。足元には、赤い海に沈んだ無数の屍。

 ガサリ。耳に届いたその音に、彼女は眼を向けた。視線の先には年端もいかない子ども。こんな地獄絵図にいることはありえない、ただの子ども。彼に、少女は笑いかけた。この凄惨な光景を作った張本人とは思えない笑顔を、瀕死の傷を負っている者とは思えない微笑みを、彼女は浮かべた。

 彼は、見た。シャツが吸いきれず、地面に落ちていた血が止まっているのを。千切れかかり、白い骨が除いていた右腕がすでに繋がっていたのを。口に収まりきらない、赤く染まった牙を。

 眼球が潰された左眼窩の空洞で、赤い管と肉が蠢き、再生をはじめているのを。

 絶叫があがった。音の無い森に、ただ悲鳴が響く。その悲鳴は、確かに、眼前の子どもがあげていた。少女が命懸けで守ろうとしていた者が、あげていた。

 悲鳴がやむと、彼はあまりの恐怖に気を失った。

 子どもを背負い、少女は生気のない足取りで、凍ったように冷たい夜を歩き始めた。